近年、SNSや健康雑誌で「デトックス」という言葉を目にしない日はない。「体内の毒素を排出して健康になる」という魅力的な謳い文句で、様々なデトックス製品が販売されている。しかし、この「デトックス効果」は科学的に証明されているのだろうか。
市販デトックス製品の効果を検証した驚きの結果市販デトックス製品に関する全ての臨床試験を系統的にレビューした研究によると、デトックス製品の効果を支持する質の高い臨床試験は0件であることが明らかになっている。さらに驚くべきことに、これらの製品のうち「毒素」の具体的な定義を示した製品は一つもなかったという結果が確認されている。つまり、何の毒素をどのようにして排出するのか、科学的に明確な説明ができない製品ばかりが市場に出回っているのが現状である。多くの製品は「なんとなく体に悪そうなもの」という曖昧なイメージに頼って、消費者の不安を煽る形で販売されていると報告されている。人体に備わった優秀な「天然デトックス」システム実は、私たちの体には既に優秀な解毒システムが備わっている。肝臓は1日約1.4リットルの血液を毎分処理し、有害物質を無害化している。一方、腎臓は1日約180リットルもの血液をろ過して、老廃物を尿として排出している。これらの数字が示すように、健康な人の肝臓と腎臓は24時間休むことなく、膨大な量の血液を処理し続けている。研究データによると、これらの臓器が正常に機能していれば、追加の「解毒」は不要であることが確認されている。市販のデトックス製品が宣伝するような「蓄積された毒素」が実際に体内に残っているとすれば、それは肝臓や腎臓に深刻な病気がある場合に限られる。そのような状態なら、サプリメントではなく医療機関での治療が必要である。なぜ「デトックス効果」を感じる人がいるのかデトックス製品の科学的根拠がないにも関わらず、「効果があった」と感じる人がいるのはなぜだろうか。その理由として、多くのデトックス製品に含まれる下剤成分による一時的な体重減少を「毒素排出」と誤認させる仕組みがあると報告されている。下剤によって腸内容物が排出されると、確かに体重は1〜2キロ減少する。しかし、これは水分と食物残渣(消化されずに残った食べ物のかす)が出ただけで、脂肪が減ったわけでも毒素が排出されたわけでもない。普通の食事に戻れば、体重もすぐに元に戻る。また、デトックスと称した極端な断食は筋肉量減少のリスクがあることが示されている。短期間で体重が落ちても、それが筋肉の減少によるものであれば、基礎代謝(安静時に消費される最低限のエネルギー)が下がり、長期的には太りやすい体質になってしまう可能性がある。「デトックス」という概念が広まった背景には、現代社会への漠然とした不安がある。食品添加物、大気汚染、ストレスなど、確かに私たちは様々な有害物質に囲まれて生活している。そんな中で「体をリセットしたい」という心理的ニーズに、デトックス産業が巧みに付け込んだ形である。本当に体調を改善したいなら科学的根拠のないデトックス製品に頼るより、肝臓と腎臓の機能を正常に保つことが重要である。そのためには、バランスの良い食事、十分な水分摂取、適度な運動、質の良い睡眠が基本となる。特に肝臓への負担を減らすため、アルコールの過剰摂取は控え、腎臓の機能を保つために塩分の取りすぎに注意することが推奨される。また、野菜や果物に含まれる抗酸化物質(体の酸化を防ぐ成分)は、体の酸化ストレス(細胞の老化や損傷を引き起こす状態)を軽減する効果があると確認されている。魅力的な宣伝文句に惑わされず、科学的根拠に基づいた健康管理を心がけることが、最も確実で安全な「デトックス」方法と言えるだろう。この知見を活かすヒントデトックス製品を購入する前に、「どの毒素を」「どのような仕組みで」排出するのかを販売者に具体的に尋ねる急激な体重減少ではなく、月に1〜2キロの緩やかなペースで健康的に体重を管理する肝臓の健康のため、週に2日以上はアルコールを飲まない休肝日を設ける腎臓の負担を減らすため、1日の塩分摂取量を男性7.5g未満、女性6.5g未満に抑える抗酸化物質を摂取するため、1日350g以上の野菜と200g以上の果物を意識的に食べる参考文献‘Detox’ diets for toxin elimination and weight management: a critical reviewJ Hum Nutr Diet 2015; 28(6): 675-686https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jhn.12286エビデンスレベル: メタアナリシス/システマティックレビュー